「フェリーネ、お願いだ」
今の殿下の立場ならば無理やり開けさすことも、転移でこの部屋に入ることもできるはずだ。
しかし、それをせずに私などに頼む彼を拒否できるわけがない。

なんとか、涙を隠したくて俯いたまま扉を開ければスルリと殿下が入ってきた。

「泣いていたのか?」

顔を見ていないのに言い当てられたことに、私は驚いて無意識に顔を上げていた。

「俺のせいだな。すまない」
その言葉の意味が解らず、私はただどうしていいのかわからず立ち尽くしていた。

しばらく部屋の入り口で私たちは向かい合っていた。何を話すべきなのかもわからないし、彼がこんなお忍びでこうして私のところにくるなど想像もしていなかった。