クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
新しい家族
 王都を去る前に、レーニスは神殿を訪れていた。今更、また聖女になりたいというわけではない。あのとき、レーニスの背中を押してくれた侍女頭のマーサに会うために。

「マーサ。忙しいところ、時間を割いてくれてありがとう」

「いいえ、レーニス様。本当に、ご立派になられて」
 マーサは柔らかく微笑んでいたが、彼女の目尻には涙が溜まっている。

「マーサ。私、あなたに恩返しをしたくて」

「ええ。確かに受け取りました。レーニス様、今、幸せですね」

「はい」
 そしてレーニスは隣に立つ夫を見上げた。
「マーサ。こちらが私の夫です」
 デーセオは女性二人の会話を黙って聞いている。だから、レーニスに紹介されたときに、簡単に名乗った程度。

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