家へと続く廊下を歩いていた時、ふと足が止まった。

 微かに聞こえてくるのは子守歌だ。義母のものでもベビーシッターのものでもない、心地よい低音。

 智秋の声だと気付いてほんの少しだけ胸がざわつく。

 彼もまた、今日の仕事を終えて一目散に楓花のもとへ向かったのだろう。

 娘を心から愛する夫の存在に頼もしさと喜びを感じながら再び歩き出す。さっきまでよりも歩く速度が増したのは、大好きなふたりの姿を今すぐ見たくなったからだ。

「ただいま」

 私が扉を開けて言うと、子守歌が途切れた。

 次いで足音が聞こえ、楓花を抱っこした智秋がやってくる。

「おかえり。今日は俺の方が早かったな」