この政略結婚に、甘い蜜を
4、新婚旅行
結婚式が終わって数日後、華恋と零は新婚旅行へ行くために飛行機へと乗り込む。新婚旅行のホテルや現地のホテルまでこちらも全て零たちによって予約されていた。

「楽しみだね」

お金持ちしか乗ることができないであろうファーストクラスの席に案内され、華恋が座ると零が微笑む。二人の新婚旅行の行き先はアメリカだ。

「はい」

アメリカに行くことにはわくわくしていたため、華恋は素直に笑って頷く。零は「楽しもうね」と目を細めながら優しい表情を見せ、華恋の頭に大きな手が触れる。

周りを見れば、自分たちはどう見えるのだろうとふと華恋は思う。ファーストクラスの席には、上品そうなマダムたちや高そうなスーツを着た紳士、ブランド物を身につけた男女もいる。

ここにいる人たちはきっと、華恋と零の薬指の指輪を見て新婚だと思うのだろう。だが、華恋と零は体を重ねるどころかキスすらもしたことがない。ただ籍を入れ、同じ家で暮らしているだけだ。

(政略結婚なのに、家族とか夫婦って言っていいの?)
< 44 / 186 >

この作品をシェア

pagetop