絶体絶命の転生ライフ、カタブツ騎士団長の溺愛にたじたじです ~追放された子猫は愛妻にジョブチェンジ!?~
 うへぇ、風が冷たいっ。吹き付ける風にブルリと震え、わたしは以前に運んでおいた板っぱを二本の前足で引き寄せて、出入り口を塞ぐように立てかけた。
 鼻先がちょんと触れちゃう近さの板は、もとは錆だらけでのガラクタで寝床に置くには到底相応しくない代物だったが、〝月の魔法〟で綺麗にしたからピッカピカ。今はもうばっちくないから、ほっぺを寄せて寝ちゃったって大丈夫だ。
 よし、これでだいぶマシになったぞ。今晩はひとまずこれで、寝てしまおう。
《みゃぁ~あ(はぁ~あ、ほんとは月の魔法で直接暖がとれたらよかったのにね)》
 わたしが月の光を浴びて人型になっている時に使える月の魔法は、月の力でなんでも清らかにしちゃえる魔法だ。ただし使用例はかなり限定的で、この板みたいに、汚れた物を綺麗にするくらいしか今のところ使い道はなかった。当然、暖をとることはできない。
 わたしはため息と共に使い勝手がいまひとつの月の魔法に恨み節をこぼし、レリウスさまの上着を引き寄せると、その下に丸まって眠りについた。

< 122 / 252 >

この作品をシェア

pagetop