警邏や各国大使館を巻き込み、ちょっとした騒ぎになった騎士団長邸への侵入者騒動も数日が経てば落ち着いた。
 物置小屋の調査やレリウスさまへの聴取で多く出入りしていた人たちも、ここ最近はぱったり来なくなった。取り戻した普段通りの日常に、わたしは安堵の胸をなで下ろしていた。
「ところで侵入者の一件、あれってその後はどうなったのかしら?」
 昼下がりの廊下を歩いていたら、偶然、使用人たちが思い出したように話題にしているのを聞きつけた。
「結局、旦那様が目撃したという人物に該当するような捜索願はどこからも出されていなかったそうだ。警邏が王都近辺で聞き込みを実施したらしいが、こちらもそれらしい人物の目撃情報は一件も挙がってこなかったらしい」
「ふーん、不思議なこともあるものね」
 わたしは何喰わぬ顔で横を通りつつ、彼女らの会話に耳をそばだてた。
「ここだけの話。わしは旦那様が夢でも見たのだろうと思っとる」
「えぇ?」