あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる
私は自分を落ち着かせようと、一度自席に戻ることにした。
考えないようにするために、PCの画面を見つめて仕事をしようとするが、どうしても、先程の絵里から見せてもらった写真が頭から離れない。
はっきりと目に焼き付いてしまったようだ。
その時、タイミングが良いのか悪いのか分からないが、悠斗さんが秘書課に入って来たのだ。
まっすぐ私の方へ向かっている。
…平常心…平常心。
私は心の中で唱えながら、悠斗さんを真っすぐ見た。
「伊織さん、この資料を会議までにまとめておいてくれ…それと、今日は外出してそのまま接待で遅くなるから会社には戻れない…よろしくな。」
「…はい。畏まりました。」
悠斗さんは何も無かったように、普段通りだ。
しかし、気になったのは今日の予定だ。
外出から接待で遅くなると言っていた。しかし秘書である私はその接待の予定を聞いていないのだ。
何か嫌な予感がする。
私は第一秘書の須藤なら何か知っているだろうと思い、須藤の席に向かった。
「須藤さん、今よろしいでしょうか?」
「伊織さん、何かな?」
あらたまった表情の私を見て、須藤はすぐに仕事の手を止めた。
「神宮寺社長の今日のご予定ですが、外出先から夜は接待に行き、遅くなるとおっしゃっていましたが。接待のお相手はどなたなのでしょうか?」
「接待?社長の予定に今日の夜の接待なんて、無かったと思うが…本人が言っていたのか?」
須藤は怪訝な表情をして、顎に手を置いて何か考えているようだった。
「今日の外出は僕も同行だから、後で聞いてみるよ。」
「…お願いします。」
すると、須藤はまわりに聞こえないように私の耳元に近づいた。
「焼きもち妬くなんて、伊織さんも可愛いところあるよね…」
「ち…ち…違います。」
思った以上に大きな声を出してしまい、慌てて口を塞いだ。
須藤はそんな私を見てクスクスと笑っている。