あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

いつもよりは、少し遅いが、会社の始業時刻には間に合った。
周りに気が付かれないよう、走って来た呼吸を整える。

急いで今日の仕事準備を始めようとした時、第一秘書である須藤が慌てた様子で近づいてきた。
なぜか、顔色が悪い。


「伊織さん、し…しゃ…社長と昨日の夜から連絡が取れないんだ。何か知らないか?」

「…っえ?」

「いつもなら、もう会社に向かっているはず…それなのに運転手にも何も伝えず、家にいないらしい…こんなことは初めてなんだ。」

「き…昨日は、社長とご一緒でした…でも、部屋に戻ると言って…それきりで…」

「部屋に?…伊織さん、どういうことなんだ。」


須藤に怪しまれても仕方がない事だ。須藤は神宮寺社長と私の関係を知らない。


「須藤さん、詳しくお話しさせてください。」


須藤は驚き、その場で一瞬動きを止めたが、その後、ゆっくりと頷いた。


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