がしら、ぼっか、あかめばる、
ほご、

いわゆる笠子=カ・サ・ゴ!
九州でいやー『アラカブ』ね。

それをね、
只今僕は、
バッコバッコ入れ食いで
目下爆釣り中な、わけ。

「アマネちゃん!こりゃあ
半端なしに調子いいなぁ!!
さっすがガンさんの弟子だ!」

「いやー、フジさん船んが
いいとこ着けてくれっからさ!
こん船だて、激熱やわな!」

僕んは改めて、
フジさんの遊漁船を撫で回して
親指を立てて(*^ー゚)b グッジョブ!!
する。

なーんせね、
海渡るの船長が涎もんの
造船所でオーダーされた
こん船は
漁船ゆーより
クルーザーばりのハイセンスさぞ!
かっけーーー!!

フジさん、予約7年待ってで
ゲットした船な。これ!
ガン爺と同じ港で遊漁船をする
フジさんにもう一度
お礼ポーズしようと
したら
脳筋レスラー3男が

「アーマーネー!!どーだ!
こいつは大物だろーー?!」

どてかいヒラメを片手にぶら下げ
るのが見えて、

「げっ!!なに?!あの魚!」

「あいつは、レスラーよりも
漁師の方が向いているな。」

塾経営の次男と
お堅し医者長男のうんざりした
顔がならぶ。

結局

義理兄弟勢ぞろいの、
なぜか

関門海峡。

演歌か?!

河かと思えるほどの地形に出来た
この海峡は
潮の流れが早くって
複雑な動きをするんよ

だ・か・ら

船酔いゲロ酔いしまくりゃええぞ
義理兄たち!

だってよ!
ここんは
"ノスタルジック海峡"であって
〜時の停車場~ぞな!

ゆっくり考えたいやん!


『海釣りはなあ、
糸を10回垂らせば10回、100回
垂らせば100回人生を考えん
時間を海で持つゆうことよ。
人生を回想しちゃ、
過ちを反省ぇし未来を考えん。
海と対峙しての、
静かに己を省みるもんじゃ。』

竿を握っと、
ガン爺の口癖がリフレインなる。

「ガン爺ーーーー!
僕んどげんしたらいいんかーー」

バカみたく海に雄叫び
そいで、
不毛に
足元んは
どんどん釣れる
アラカブ、ゆうに30はいっとる
で山が出来る。

それでも
無心に僕は
40回目を越す針を海に落として、
40回目を越す
病院での宣告を回想して
40回目の咀嚼する。


『まず、旦那様、奥様は脳死の
状態ですが、現在妊娠24週を
越えていますので、
生命維持措置を胎児も合わせて
行ってますが、どうされますか』


おもりを
ゆっくーり
噛み締めるように海の底に
沈めて
いく。

『え、妻は、妊娠をしている
のですか?あの、僕の子供?』

“コン"と
底に
おもりが
着いた感覚が
竿にする。

『旦那様は、御存じなかったと
いう事ですか?、、其れは、、
胎児の段階でのDNA判定は
難しいので、我々では何とも』

そしたら
少し
糸を巻いて、
しばらく

20秒ぐらいか
待つ。

『妻は全然、そのお腹が出たり
してませんでしたり、夫婦生活
も普通にしてたんですが?!』

今度は
少しだけ 糸を巻き、
すれすれ、
竿を引き上げてを
繰り返し

魚を
誘う。

『18週までは膨らみは目立ち
ませんから、わからないままも
ありますが、奥様の荷物には
母子手帳がありましたので、
奥様は理解されてたと、、』

魚が針に掛かって、
ぐぐっと
竿が
魚の重みで
大きく
しなる。

『ですので、
12週を越えての胎児死亡は
死亡届けが必要になります。』


深ーく沈めた
おもりごと
くる
ずしりと
重たい
手ごたえ。

『え?お腹の子供は死んだん
ですか?事故の時にですか?』


巻きあげに
力が入って
夢中でリールを
巻く。

『違います。ですので、奥様の
呼吸器をどうされますか?
それによって、という事です。
正式な説明は昼前にあります
から、ご家族と話あって、、』


『・・・・脳死って治らない?』


海面に
みるみる現れる
鮮やかに
真っ赤な
アラカブが
水面を蹴って釣り上がる。

思わず

僕んは

「ワーーーーーーーーー!」

って 又狂ったみたいに
思い切り
叫んで
ヤケクソに
アラカブを

針からはずす。

ガン爺!何度も針ぃ落とすけどな
答えなんが出ぇへんが!!
足元んに
無駄に僕んの腕がえーんか
フジさんのポイントが
バッチシなんか

アラカブん山が、また
出来てく。

僕は、

島の養護院出身だ。

瀬戸内海の島には
全国から
保護された、子どもが集まる
養護院がけっこうあって、

僕んの方言チャンポンは
そのせいや思う。

ガン爺は、僕んの里親。

釣り船を生業にしとって、
僕んが将来引き継ぐんに
手伝っとった。
んでも、
僕んが釣り船をやる前に
ガン爺は亡ーなって、
僕んは又
1人ん、なった。


「アマネ、今すぐ答えを出さな
くてもいい。全員、正解が
まだ、わからないんだからな」

ガイドのおかんが、
甲斐甲斐しく
お堅し医者長男の竿に
餌ぁ付けては
釣れたら
針ぃ外して、
処理してんの
ガキんちょみたく
なされるがままん
ポーズで
義理兄は僕んに 呟いてくる。

「医者の貴方が言うんですか。
さっき聞かれましたよ、
カレンさんは臓器提供カードを
持ってないですかって。」

今ん僕んの顔は
えげつ
意地の悪い顔しとるんや思う。

だから、
そんな風に
義長兄ん後ろに

立たんでくれよ。

「カ、レン、、」

後ろ姿なんに、

まるで、
兄さんを責めんなって
言われとんみたいやから、、

ほんの数時間前
病室で

僕んに状況を話す
義長兄の後ろに
突然あらわれた、後ろ姿の妻。

別室で
宿直医から説明を
受けている間も、

その後ろには
後ろ姿の妻が 立っていた。

本当は、あのベッドで
人工呼吸器や
人口栄養や
透析を受けているはずの
レベル5の妻が。


『・・・少し考えさせて下さい』

ずっとマンションん部屋から
動かなかんかった
後ろ姿の妻。

ここに来てよ、
急に現れたんは、
一体、何を言いたいん?、、

僕んは
色々堪らんなって
深夜
義長兄と部屋を出た。

『一旦外に出るか?アマネ。
時間外の病院は
ただでさえ、息が詰まるだろ』

救急のサイレンが響くのを背中に
言われるまま
玄関出ると、

自動販売機で買った缶コーヒーを
僕んに見せて

『お前、こっちの出だろ?
ちょっと気分転換に車だして
くれよ。コーヒーやるから』

そんまま緩いコーヒー
ぶん投げてきたから、
仕方なく、近くのレトロ港駅に
車を走らせた。

確かに、そん時は
くそ義長兄と2人だったのだ。