アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
恋人と婚約者
僕の彼女は、とにかくモテる。

とにかく可愛い。

とにかく優しくて、穏やか。

だから僕は毎日、気が気じゃない。

だから僕は毎日、言い聞かせるんだ。

「四葉のクローバーってさ。
幸せを運ぶって言うでしょ?
でもそれは“四葉を持ってる人間”だけ。
だから……
僕“だけ”に、幸せをちょうだい!」

って━━━━━━


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

都筑 揚羽。

都筑組・組長の愛孫で、若頭の息子。
知性が高く、頭の回転が早いクールなイケメン。
しかし、ワガママで自己中心的。

揚羽が朝起きてまずすることは、愛してやまない恋人・九重 四葉へのモーニングコール。

『ん…もしもし…』
少しかすれ声で電話に出た、四葉。
「四葉、おはよ。もう起きなきゃ、遅れるよ?」
『あ…うん、ほんとだ……』
「じゃあ、また8時に“鳳雅が”迎えに行くからね。
校門で待ってるから」
『うん』
「また後でね」
『あ、待って』
「ん?」
『もう少し、揚羽くんとお話したい。昨日の夜私がすぐ寝ちゃったから』
「うん。僕もだよ。でも早く準備しないと遅れるから、学校でいっぱい話しよ?大丈夫。すぐ会えるよ」
『うん…』
基本的には、冷たく淡々と話をする揚羽。
しかし四葉にだけは、声が柔らかく甘くなり、優しい。

四葉は今や最大と言われている財閥、九重財閥・会長の愛孫。
可愛らしくて、穏やかで優しい箱入り娘。
過保護な両親に寵愛されている。

恋人である揚羽も、かなり過保護で四葉を溺愛している。
そして四葉も、揚羽に依存している。



モーニングコールをした揚羽。
部屋を出て、従兄弟の鳳雅の部屋に向かった。

バン!!とノックもせず開け、中に入る。
「鳳雅!!」

「んぁ?」
「キャッ!!揚羽様!?」
鳳雅は、女性と裸で寝ていた。
ムクッと起き上がった鳳雅と、慌ててシーツで身体を隠す女性。

「揚羽、なんだよ!?」
「なんだよじゃない。
もう起きろ。四葉を迎えに行く時間が迫っている。準備をして、朝食を食べろ」

「だからぁ!毎日迎えに行かなくても、四葉は自分で来れるだろ?」
「は?途中で何かあったらどうする?
四葉は可愛いから、すぐに拐われる」
「はぁー」
ため息をつく、鳳雅。

「…………僕だって、わざわざ鳳雅に頼みたくない。
四葉に関することは、全て僕がしたい。
でも、無理だろ?
九重家は、鳳雅“以外の”他人に、四葉を関わらせない」

「そう…だな……」
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