アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
アゲハ蝶は、クローバーを一人占めする
「揚羽くん」
「ん?」

「下ろして。
私、歩けるよ」

抱っこをされたまま、車に向かう揚羽に声をかける四葉。

「ダメ」
「どうして?」

「逃げられたら、僕はもう生きていけないから」

「逃げないよ。もう、覚悟決めたよ」

「でもわからないだろ?
僕を一度受け入れてくれたから、もう……二度と受け入れないは通用しないよ」

「わかってるよ」

「これから、怖い思いさせるかもだよ?」
「うん」
「僕の周りは、怖い奴等が多いよ?」
「うん」

四葉の目に、迷いはなかった。

「そっか……!」
「私、考えたの!」
「ん?」

「怖い時は、いつもみたいに揚羽くんにくっついて抱きつくようにする。
揚羽くんに守ってもらうもん!」

「………」
「……え?も、もしかして、ひ、退いた?」

「フフフ……ハハハッ…!!!」
「え?え?な、何!?」
突然、笑いだす揚羽。

「可愛いなぁと思って。
まさか、そんな対応されるとは思ってなかったから!
そっか。
僕に守ってもらうか……!
フフ……」

「だ、ダメ?」

「ううん。守るよ!僕が、四葉を一生守る!」

「揚羽くん」

「ん?」

「大好き」

「うん」

「最後の電話の時……」

「ん?」

「本当は、そう言いたかった。
ただ“好きだよ”って……」

「うん」

「でも受け入れられないのに、好きって言うのは違うと思ったの。
だから………」

「………わかってたよ」

「本当は、凄く簡単なことだったのかもね……!」

「ん?」

「私が揚羽くんを好きで、揚羽くんが私を好き。
それだけで、良かったんだよね」

「うん、そうだな……!」


それから、車に乗り込んだ二人。

「何処に行くの?」
「僕の家」
「都筑の屋敷?」
「うん」

「揚羽くんのお部屋?」

「うん。今日からは堂々と僕の部屋に来れるよ。
今日は泊まってってよ!」

「揚羽くんのお部屋!!!」
急にテンションが上がる、四葉。

「四葉?」
「私、揚羽くんのお部屋行ってみたかったの!
楽しみー!」

「あーそうだね。
初めてだよね?ずっと僕達は、基本大学でしか会えなかったから。
…………でも、わかってる?四葉」
「え?」


「今日は、部屋から出さないからね……!」

揚羽の目が、妖しく光った。
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