狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜
突然の乱入者

 三月初旬、美桜の元に縁談の話が舞い込んでから、早くも一月が経過しようとしている。

 まだ朝夕の寒暖差こそあれど、四月を迎えた途端に、日中の気温は随分と暖かくなってきた。春の季節を一気に飛び越したように、汗ばむ日もあるくらいだ。

 けれど今日はあいにくの曇り空が広がっているせいで、少し肌寒く感じられる。

 あたかも憂鬱な心持ちでこの日に臨んだ美桜の胸の内を表してでもいるかのような天候だ。 

 天澤家の風光明媚な和風庭園同様、高級料亭の荘厳な佇まいに見合った趣ある和風庭園には、立派なソメイヨシノが植えられており、ちょうど見頃を迎えていた。

 可憐な薄桃色が特徴的な他の種類とは違い、白味を帯びた仄かな薄桃色の花弁が時折雲の切れ間を縫って射し込む薄陽を浴びて、より淡く、白さが際立って見える様は、なんとも儚げだ。

 冬に咲くものや年に二度咲くものもあるらしいが、一般的に知られている桜は春の季節にしか花を咲かせない。それも短い期間だけ。

 だからこそ、昔も今も変わらず、人々の心を惹きつけて止まないのだろう。
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