狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

 もうすぐ二十歳を迎えようとしている美桜は、今年二十三歳になるのだという優子と歳が近いせいか、気が合い、こうして一緒に話していると時間なんてあっという間に過ぎてしまう。

 何よりも華道に重きを置く両親の意向で、大学への進学を諦めざるを得なかった家事手伝いの身である、外の世界を知らない美桜にとっては、優子は友人のような存在でもあった。

 こうして華道教室で生け花に勤しんでいる時間が、唯一心が安らげる時間だといってもいいかもしれない。

 本来ならば、華道教室ではなく、家族と一緒に過ごす時間が心身ともに安らげる癒しであるはずだが、残念ながらそうではなかった。

 なぜなら美桜は、父が愛人に産ませた子供、いわゆる妾腹の子だったからだ。

 記憶などないが、ちょうど今頃の季節、三つになろうとしていた頃に実の母親を病気で亡くしている。

 身寄りのなかった美桜は、母を荼毘に付してすぐ、父親の元に引き取られたのだ。
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