離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
6(風香視点)
 ちょうど関東が梅雨入りした土曜日の朝、私はうっすら目を覚ます。

 窓の外は静かな雨の音。
 私は永嗣さんの腕の中。


(裸で抱き合うって、気持ちいいんだなあ……)


梅雨冷えと糸雨にしっとりとした空気の中、永嗣さんの肌に寄り添う。ふと、彼の腕の力が強くなって。



「──おはよう」


 永嗣さんが目を細めた。


「起こしてしまいましたか?」

「いや?」


 寝たふりをしていた、と永嗣さんが微かに笑った。


「まだ風香を抱きしめていたくて」

「──!」

「あったかいな、風香は」



 幸せそうに彼は言う。
 私はなんだか勘違いしそうになる。
 愛されているような、そんな気分になってしまう。


『きみは俺の妻だ。きみ以上に優先し大切にする人間なんかこの地球上に存在しない』


 少し前、彼はそう言った──

 私は「妻」だから大切にされているだけ。
 誠実な人だから、契約でも仮初でも、一時でも自らの伴侶であるから大切にしてくれているだけ。

 分かっているのにね。


「私も──もう少し、こうしていたいです」


 彼の心音が聞こえる。温かな体温に、蕩けて消えてしまいたいとすら思ってしまう──

 永嗣さんの腕の力が強くなる。

 頭にキスが落ちてきて、やがて私は組み敷かれて全身にキスで触れられる。

 ああ本当に、

 蕩けてしまえたなら幸せなのに。

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