「俺は仕事で疲れてんだろうが…っ!!テメェは誰に対して生意気な口聞いてんだ……!!!ぁ”あ“!?」



ガシャンッと、下の階からグラスが割れた音が響いた。

また割ってしまったのかと、でもそれ以上に母親は無事だろうかという心配のほうが大きかった。


亭主関白で頑固な父親にはどうしても合わせられない母親が少しでも口答えをしてしまったとき。

そこで試合開始のゴングが鳴る。



「なんだよお前、なんで泣いてんだよ」


「あんなのいつものことだろ」



5歳と4歳離れた年子の兄が2人。

長男の部屋へ3兄妹はいつも集まって、1階から聞こえる物音に気にしないふりを続けていた。


そのとき私はまだ小学校3年生で、兄は中学生だったから。


慣れてしまえば両親の喧嘩なんてものは梅雨に降る雨くらいの気持ちなのだろうか。

比較的真面目な長男はテスト勉強、次男はマンガに夢中、耳を塞ぐように膝を抱えるのが私だった。



「なんで…うちは喧嘩ばかりなの、」



そんな中で唯一胸を痛めているのは私だけ。

確かにもっと小さな頃から喧嘩はしょっちゅうで、父親の怒鳴り声は当たり前だった。