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“おはよ音無。今日すげーいい天気って知ってた?”
“音無、おまえが好きって言ってたキャンディスモーカーズ?だっけ?今日のお笑い特番に出るらしいよ”
“音無が教えてくれたアプリ入れて初回ガチャ引いたけど、星1しか出なかった。どーなってんのこれ”
こうして毎日のように名前を入れる。
音無という存在はちゃんとあるってことを証明するために。
おまえが俺にしてくれたように。
今日も俺はどんな話をしようかと、会って話せないぶん文字として打つ。
たとえ返信が無かったとしても。
「今日も休みだって。なんかコロコロ性格変わってたし、精神やられたんじゃない?」
「だね。このままだと不登校確定じゃん」
音無 あすかが教室に姿を現さなくなって7日目。
それまで仲良くしていた女たちは嘲笑うように静かな席を見つめ、優しさの欠片もない言葉を送る。
姿がある日も無い日もそれしか言えない奴らなのかと、腹立たしい気持ちを抑えた。
「安達くん、これ…音無さんの数学のノート、」
「わ、すご。びっしり書かれてる」
「次の英語もわたしがやろっか…?」
「大丈夫。ありがと里見さん」