この日にかけていた。

私は、この日に懸けていたのだ。



「じゃあ行ってきまーす!」


「楽しんできてね~」



車に乗り込んだのは親子ふたり。
玄関で手を振る母親がひとり。

兄も帰ってこない夏休み、ちょろっと電話で話しただけ。

そりゃこんな家に帰ったところで息が詰まる思いなんだから当たり前だ。


今だって母親も連れて3人で車に乗り込むのが普通なのに、見送るお母さんはホッと安心したような顔。


そう、こうして私はお母さんに1人でゆっくりしてもらう時間を与えてもいるのだ。



「お父さん、やっぱり夜は焼き肉?」


「あぁ、特上の肉買ってくか」


「うん」



お父さんは釣りだったりキャンプだったりが昔から好きな根っからのアウトドアな人。

行くときは必ず私を誘ってくるようになったのは私が小学生の頃から。


そう、私がこの人にとってのマスコットになったとき。

世間では父親っ子と言われていたけれど、私からすれば絶対に失敗は許されない命が懸かった任務みたいなものだった。



「なんかお前、さいきん静かだな」


「そ、そう?」


「せっかく連れて来てやってんのに」