追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
プロローグ
悠久の国、ファルナシオン。

 この国がそう呼ばれるのは、長く平和が続く、穏やかな国だからだ。
 大昔、魔王との苛烈な戦があったらしいけど、今はそんなこと、思いも及ばないくらい平穏である。
 その核となるのが「聖女」と呼ばれる者だ。
 聖女は、月蝕に行われる祝祭において、北の祭壇に封印されたという魔王の復活を阻止するため祈りを捧げる。封印をより強固にし、未来永劫魔王を閉じ込め、またその強大な魔力によって豊穣と繁栄をもたらす貴重な存在なのだ。
 聖女の力により、ファルナシオンの平和がある、といっても過言ではない。
 そんな希望に満ちた国のある一家に、私、ララ・レダー・カレリアスは生まれた。
 カレリアス伯爵家は代々、魔法を持つ者を数多く輩出してきた家系で、実際私の親族の中にも、魔法が使える者がいる。簡単な裂傷を直したり、結界を張ったり。多くの者が一つのことに特化した魔法の中で、私の魔法だけは群を抜いて強大だった。
 私の「創造」という魔法は、宝石や鉱石を基にして物を創り出す。頭で想像したものをなんでも創り出すことの出来る、万能の御業である。
 「聖女」となるには国で一番の魔力の持ち主でなくてはならない、という掟のようなものがあって、それに従い私は聖女となり、同時に次期国王、王子アンセルの婚約者にもなった。
 他人が見れば、これはとても幸せなことなのだろう。でも私には、どうでもいいことだった。
 私はただ、今置かれている状況を好転させたかった。家族に認められ、愛されたかっただけなのに……。
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