追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 ディオが殊勝に頭を下げると、ウーノがブッと噴き出した。

「隠し事はダメですよね。これからはなんでも話してくれると思いますよ、ね。ディオ様?」

「あ、ああ。努力はする」

 その言い方に、今度は私が噴き出し、やがて全員が笑い出した。
 そこへガノンたちがやって来て、オットたちも集まり賑やかになった広場は笑いに満ちる。
 ディオの周りに人が集う。
 それは、グリーランドの結束が、より高まった瞬間だった。

「では、俺とララはガノン隊長たちと先行する。母上、留守をよろしくお願いします。あとのみんなは、月蝕の夜、王宮で会おう」

 初めてグリーランドに降り立った場所で、ディオはヘンルーダたちに告げた。
 ガノンたち騎士団はすでに山を下り、麓で待っている。ヘンルーダから貰った衣装に身を包み、ちょっとだけ聖女らしくなった私は、ディオと共に一番星の美しい夕暮れの中、王都に向けて出発する。
 麓まではアメちゃんに乗り、それから、整備された街道を騎士団と夜通し馬を駆ければ、明日の朝には着く予定だ。

「ディオ、ララさん、きっとまたここで会いましょう。待っていますよ」
「はい。きっと」

 短くヘンルーダに答え、私とディオはアメちゃんの背に乗った。
 翼を大きく羽ばたかせると砂埃と共にドラゴンは飛翔する。
 そして、ヘンルーダたちの頭上をゆっくり旋回した。
 大きく手を振るマイアとグレイス。強く頷くヘンルーダ。サーシャは手を翳して一生懸命背伸びする。ウーノたちは戦士を見送るように敬意を込めて見つめていた。
 私の大好きなグリーランド。大好きな人たち。
 みんなの視線に見送られ、私とディオは颯爽と麓を目指した。
< 226 / 275 >

この作品をシェア

pagetop