追放された私は、悲劇の聖女に転生したらしいです
 やるなら徹底的にやろうと思っている。
 壊れかけのあばら家を新築にして、竈をIHクッキングヒーターにするつもりだ。お風呂がないのが不満だったので、温泉が湧けば温泉施設を、湧かなければ銭湯を創ってもいい。安全安心な飲み水を確保するのも大切だ。
 想像力は無限。やる気も無限。
 ララ・レダー・カレリアス、旅商人から居住区創造アドバイザーとして、グリーランドに骨を埋めてもいい、とまで考えている。

「後悔なんてしないさ。好きにやってくれ。では、よろしくララ。今この時から、君は客人じゃなく、俺たちの仲間。いいかい?」

「望むところです!」

 金色に輝く満月の下、私とディオは固く握手を交わす。
 王都から遠く離れたこの地で、私は漸く、自分らしく生きられる場所を見つけたのかもしれない。

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