好きだけど、好きなのに、好きだから

*出会い

部活が終わって、帰り支度を済ませる。

優里亜先輩に傷の手当てのお礼を言いに、洗濯場に顔を出す。

「お疲れっす」

「お疲れ様。傷どう?」

「もう平気っす」

「一応見せて!」

先輩が俺の腕をぐいっと引いて……先輩の顔に引き寄せられた俺の顔。

あっ……

先輩の少し上向きの視線とぱちっと重なる。

俺は、思わず息を呑んでしまう。

一瞬、ドキッとした俺の胸……

「先輩……」

「ん?」

「その……近いっす」

「あっ……ごめん」

先輩は何も気にしていないようだった。
< 42 / 97 >

この作品をシェア

pagetop