好きだけど、好きなのに、好きだから
部活前。

ジャージ掛けてくれたお礼、言えてないな……

準備をしながら、頭の中ではその事ばかり考えていた。

部室のドアが開いて、誠が出てきた。

短パンを上げながら、めくれたTシャツからお腹がチラッと覗く。

「もう誠!ちゃんと着替えてから出てきなさいよ」

部室のドアが開く音がして、振り返る。

「佐伯君!」

お礼言わなきゃ。

と思った瞬間……

ん?

私の頭に置かれた誠の手。

私は、誠の横顔を見上げた。

誠は佐伯君を見ていて、佐伯君は私を見ている。

それぞれの視線が、微妙な空気を醸し出している。

誠が、私の頭をポンポンとした。

佐伯君に見せつけるかのように。

でも佐伯君は、我関せずと視線を外して体育館へと入っていった。
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