好きだけど、好きなのに、好きだから
朝練の後、更衣室を出ると健が私を待っていた。

「健!お疲れ」

「やっぱり、朝は三人じゃねぇとな」

「ごめん……」

健には、理由も伝えずに先に行くとだけ連絡していた。

「誠から聞いた」

「……」

健が私の頭にそっと手を添える。

健は、同い年だけどお兄ちゃんみたい。

私と誠が喧嘩した時は、いつも優しく寄り添ってくれる。

「佐伯は何て?」

「あれから、話してないの」

「そっか」

「でも、もう練習付き合うの辞めようと思う」

健が、私の顔を覗く。

「優里亜の気持ちは?それでいいの?」

「えっ?」

健は、それが私の本心でないことをわかっている。

さすが、幼馴染みだ。

「私は……辞めたくない」

「それぞれ、思うことがあるじゃないかな」

ん?思うこと。

「まぁ誠のことは、俺に任せろ」

健はそう言って、私の肩を叩いた。

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