望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
3.偽装
 カレンが真っ白いウェディングドレスに身を包んだ頃、一週間ぶりにレイモンドが姿を現した。彼も真っ白なタキシードに身を包んでいる。きっと今後も、この衣装のように真っ白い関係が続くのだろうと思う。
 ニコリと愛想笑いもせずに、レイモンドが手を差し出してきた。無言ではあるが、義務は果たす、という態度なのだろうか。カレンも義務を果たすためにその手をそっととった。

 これは一種の儀式だ。静かに式は進行する。そう、儀式であり、義務。
 だが「誓います」というその言葉をレイモンドが躊躇ったことに、カレンは気付いた。
 恐らく、誓いたくないのだろう。誓いのキスも手の甲に軽く触れて終わり。
 だから、誓いたくないのだ、レイモンドは。
 カレンとの永遠の愛なんて。

 何しろ愛のない結婚、政略結婚なのだから。国のための結婚。それはお互いにとってそういうもの。

< 21 / 269 >

この作品をシェア

pagetop