望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
26.余憤
「誰?」
 外からの侵入者に気付いたのか、その室内に女の声が響いた。情交のまま眠りについたのだろう。その女は裸だ。それに上掛けを巻き付け、ベッドの上で上半身を起こしている。

「お久しぶりでございます、お姉さま」
 ゆらりと揺れるカーテンから姿を現す。

「カレン」
 姉は妹の名を口にする。

「あら。そちらにいらっしゃるのは、王太子殿下ではないのね」
 姉の隣で顔を真っ青にしている男。むしろ、青白い。

「誰か、誰か」
 女が大きなかな切り声をあげた。それに驚いたのは隣の男だ。いそいそとベッドから這い出て、その辺に散らかっている衣類を手に取り身に着ける。

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