望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
30.悪神
 小高い丘から城下町を見下ろす。その中心にそびえたつのがダレンバーナの城。
 薄暗い夜明け前。まだ町は静か。空気もほんのり冷たい。

「カレン」
 頭の上からレイモンドの声が降ってきた。一人で馬に乗ることができないカレンは、レイモンドと一緒に馬にまたがっていた。
「準備は、いいか?」

「はい」
 それを合図に、馬は一気に丘を駆け降りる。レイモンドの後ろをついていく、幾人かの騎士。彼らは、このダレンバーナに嫁いでいるローゼンフェルドの花嫁を奪い返すのが役割。

 ピシッと何かに触れる感じがした。これが獣化を防ぐ魔法。
 今から二時間。レイモンドに伝えたいけれど、馬が走っているときに喋ると舌を噛むぞと言われている。
 だが、彼はカレンが言いたいことを察したらしい。言わなくても伝わった。

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