結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
エピローグ
 春、咲き誇る桜に見守られて凛音は男の子を出産した。

 陣痛開始から四十七時間後という、結構な難産だった。

「ふたりとも無事で、本当によかった」

 産まれたばかりの我が子を抱く凛音の隣で、龍一は大きく息を吐いた。

「身体は大丈夫か?」

 心配そうに顔をのぞき込んでくる龍一に凛音は正直にこぼす。

「全然大丈夫じゃないです。手も足も力が入らなくて……出産がこんなに大変だとは想像以上でした」

 産声を聞いたときに涙があふれるような感動シーンを思い描いていたのだが、現実は耐えがたい痛みが終わった安堵感のほうが大きいくらいだった。

 医師や助産師が去り、我が子と過ごす『カンガルーケア』と呼ばれる時間を迎えた今になってやっと、母親になった喜びが込みあげてきた。

 凛音は小さな息子に視線を落として、ほほ笑む。

「でも、この子のためならがんばれそうです!」
「ひとりじゃないからな、俺も一緒にがんばる」

 龍一も指先でそっと我が子の頬を撫でる。

「口元が凛音に似てるな」
「そうですか? 私は輪郭が龍一さんにそっくりだなって思いました」

 クスクスと笑い合う幸せな時間。
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