結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
二章
 凛音は父親を知らない。凛音が生まれてすぐに離婚したらしく、物心ついた頃にはすでに母親とふたり暮らしだった。

 母子家庭だが、経済的には裕福だった。銀座の高級クラブでホステスをしていた母親には十分な収入があったから。

 娘の目から見ても本当に華やかな女性で、男性を虜にすることにかんしては天才的だった。だが、家庭や子どもへの関心は薄く、凛音の幼少期は寂しいものだった。

 凛音が中学二年生のとき、その母親が結婚することになった。相手は長くパトロンのような存在だった男性で、世界にも名をとどろかす水無月家の当主だった。

 それまで母子で暮らしていた2LDKのマンションもそれなりに豪華だったが、渋谷区松濤にある水無月本家を初めて目にしたときの衝撃は今でも忘れられない。

 都心の一等地とは思えないほど広々とした敷地に建つ白亜の豪邸。
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