結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
四章
(世界中の誰よりも愛しているのに……この恋情はお前を傷つけるばかりだ)

 ふたりがひと晩過ごしたオーシャンビューのスイートルームに朝日が降り注ぐ。

 そのまぶしさで目を覚ました凛音が、隣に寄り添う龍一の姿にぽっと頬を染める。

「あ……おはようございます」 

 照れた笑顔に、龍一は言葉を詰まらせる。

 これ以上はないという幸福と耐えがたい苦悩が同時に襲いかかってくる。絶対に進んではいけない道に足を踏み入れてしまった。だが、後悔はない。すべてを失ったとしても、ゆうべのひと時を悔やむことはないだろう。

 苦しいのは……この時間の甘さを知ってしまった自分がここから引き返せるのか、その自信がないからだろう。

 迷いを断ち切るように龍一は大きく頭を振って、上半身を起こした。

「せっかくだから、テラスで朝食を食べようか」

 そう言って、裸のままの凛音の肩にローブをかけてやった。

 水彩で描いたような澄んだ青空とどこまでも続く大海原。爽やかな風が心地いい。

 景色が見やすいように、ふたりは対面ではなく横並びに座った。

 小さな丸テーブルの上にはルームサービスで頼んだ、焼きたてのパンが自慢の朝食プレートが置かれている。

「このロケーションで食べると、よりおいしく感じますね」
「そうだな」

 サクサクのクロワッサンにかぶりつく凛音は小さな子どものようで、ゆうべの色っぽかった彼女とは別人のよう。龍一の頬は無意識に緩む。

「パンくずがついてるぞ」
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