結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
一章
 ひと月前。

【家族の肖像~若き海運王、水無月龍一のルーツに迫る~】

 そんなタイトルの書かれたテレビ番組の企画書を凛音はパラパラとめくる。

 日曜日の夜十時に民放キー局で放送されている長寿番組だ。成功した実業家やスポーツ選手の家族や祖先にまつわるエピソードを紹介する三十分番組で、その記念すべき千回目のゲストは水無月シップスを率いる若き経営者、龍一だ。

 今、凛音の目の前でテレビクルーがカメラを回して彼を撮影している。

 海を臨める水無月ビル自慢のカフェテリアで、龍一はインタビュアーからの質問に歯切れよく回答していく。

父親の急死により若干二十歳で水無月グループの代表の椅子に座ったという話題性、それから十年に渡り右肩あがりで業績を伸ばし続けている実力。おまけにモデル顔負けのルックスと人当たりのいい性格。メディアにとっては、そこらのタレント以上に数字を取れる逸材だ。

 テレビや雑誌の取材はひっきりなしなので、龍一もすっかり慣れたもの。
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