ホットカーラーの流行は、貴族の家で働く女性達の間で始まった。

 侍女やメイドは、主人が目を覚ますよりも前に起床し、身支度を整え、呼ばれればすぐに駆け付けなければならない。

 下働きのメイドはそこまででもないのだが、身分の高い女性に仕えている侍女の中には、自身が貴族の家系である者も多い。

 行儀見習いを兼ねて主に仕えている間に、いい縁談が決まればそれにこしたことはないというわけで、身なりにも気を配るのだそうだ。

 コテで髪を巻いてから結う者も多く、朝は早起きが必須。けれど、ミリエラの発明したホットカーラーを使うと、髪を巻いている間に他のことができる。仲間内の情報網であっという間に広がったそうだ。

(前世では、ホットカーラーなんて使ったことなかったから、気が付かなかったな)

 そして、ミリエラの魔道具が流行したとなったらグローヴァー侯爵家としてはやることはひとつである。魔道具の売り込みだ。

「ニコラ、またお留守番だね……」
「馬車での移動はお腹の子にはよくありませんからね。領地でお待ちしておりますよ」