孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「え~……やっぱり、いるのかなあ、彼女。フランス帰りなのに」


中谷さんまで、テーブルに両手で頬杖をついてボヤく。


「将来有望な新進脳外科医で、実はイケメンだもの。三ヵ月もあれば、日本で彼女くらいできるでしょ」

「って言うか、実はイケメンって知ってる人、そんなに多くないですよね。私たちと、脳外科医と研修医……」

「え! もしかして、この中にいる……とか」


テーブルを囲む皆が突然疑心暗鬼になって、それぞれに顔を見合わせた。
私は中谷さんから受けた視線を流すように、逆方向に顔を向ける。
と、その時。


「好きな子に振り向いてもらいたい……っていう方が、正解じゃない?」


操が、ナースステーションに戻ってきた。
皆が「お疲れ様でーす」と声をかける中、私の隣の椅子に腰かける。


「そう思わない? 霞」


軽く足を組み上げ、私に向かって小首を傾げた。


「えっ!?」


いきなり振られた私はギョッとして、ひっくり返った声を返した。


「さ、さあ……?」


一瞬にして皆から視線を浴びて、首を縮める。
やっと起ち上がったパソコンに身を屈め、無駄に力を込めてIDを入力した。
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