孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
脳外科教授のラブコールを受けて入職した霧生君と、三ヵ月前、私は十五年ぶりにこの病院で再会した。
でも、私がここ最近実家に戻っている、というのは嘘。
結婚を考えていた剛と別れたことを、私の両親はなにも心配していない。
と言うのも、両親には霧生君を結婚相手として紹介したからだ。


私たちは三ヵ月という期間限定で、契約結婚をした。
それと同時に、霧生君の家で同居生活を始めたものの、本当の夫婦らしくする必要はなかった。


職場では一緒にオペに入る関係上、気を許しすぎないよう、家でもお互い名字で呼び合っている。
私たちの同居は、元クラスメイト同士のルームシェア……いや、私が彼のマンションに間借りして居候しているだけだ。
こんな生活もあと二週間、大晦日をもって満了する。


クリスマスは『離婚』前のイベントで、私たちはまだ『夫婦』だけど、霧生君と約束をしているわけではない。
操と焼き鳥を食べながら、ビールを飲みに行ったって平気なのに……。


『私がご飯作るから、盛大に納会しよう』


最終日を言い訳にして、そんな誘いをしたばかりだというのに、クリスマスまで。
まるで、思い出作りみたいなことを。
私、なにを言ってるんだろう――。


「…………」


自分が謎で、パソコンモニターから目を逸らす。
自嘲気味に睫毛を伏せ、無言でかぶりを振った。
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