カタン――。
小さな物音が耳をくすぐり、私はハッと目を開けた。
煌々と灯った天井の電気がまっすぐ降ってきて、思わず目を眩ませる。
明かりに目が慣れてくると、起き上がって辺りを見回した。


体育館みたいにだだっ広いリビングダイニング。
六人がけのダイニングテーブルの向こうに、立派なキッチンカウンターがある。
私の真向かいの窓は一面ガラス張りで、半分シェードが降りている。
外が真っ暗なため、室内の様子が映り込み、大きなスクリーンみたいだ。


もちろんここは、私が看護師になって以来八年暮らしている、古い看護師寮の1Kの部屋じゃない。
霧生君のマンションだ。


私は、リビングの片隅に置かれたソファに横たわっていた。
テレビは点けっ放し。
ローテーブルの上にはレモンサワーの缶が二本。
開いたポップコーンの袋が置いてある。
映画の地上放送を観ているうちに、うたた寝してしまったようだ。


状況を把握して、ソファの前のローテーブルからスマホを手に取った。
時間を確認していると、リビングのドアが開いた。


「あれ。起きてたの」

「お帰り、霧生君」


リビングに入ってきたこの部屋の主と、私の声が被った。
手にしたスマホのデジタル時計表示は、もう午前零時を過ぎている。