年内の最終外来診療日を、明日に控えている。
それに先立ち、今日の尖頭洗浄術が、霧生君が執刀する今年最後のオペだ。


患者は五十代男性。
ひと月ほど前に自宅の階段から転落。
頭部を打撲して、クリニックを受診していた。
数日前に頭痛を訴え、紹介状を持って当院来院。
慢性硬膜下血腫と診断され、手術のために入院……頭部外傷の典型的な症例だ。


私はスタッフ準備室の洗面台前に立ち、肩を動かして大きく息を吐いた。
鏡の中の、キャップとマスクを着けた自分を、睨むように見つめる。


クリスマスの夜から、霧生君は家に帰ってこない。
シフト上、当直勤務はないはずだけど、多分ずっと病院に泊まり込んでいるのだろう。
オペ後、予断を許さない患者がいるわけでもないから、私を避けているのは明白だ。


覚えてないフリをして、平和に済ませたかったのに……。
霧生君があまりに私を避けるせいで、それも白々しくなってしまった。


それでも、この先も共にオペに入る以上、気まずさを残したくない。
このままじゃ、契約結婚期限満了まで、話すことはおろか顔を合わせることもできないと思い、私はこのオペに入る予定だった操に頼み、担当を交替してもらった。