孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
戸惑いエモーション
テレビでは行く年を偲び、日本各地の年越し模様を放送している。
どこかの有名なお寺で突く除夜の鐘の音が、厳かな余韻を残して消えていき――。
午前零時と同時に、番組が替わった。


三ヵ月に及ぶ契約結婚は、たった今を持って期間満了。
円満離婚するはずが話は縺れ、私は戸籍上まだ『霧生霞』のまま。
同居解消にも至らず、寮に戻ることもできない。
霧生君のマンションで、呆然自失状態で新年を迎えてしまった。
一方的に離婚拒否を言い渡した『旦那様』は、やけに悠然とソファに腰かけ、長い足を組み上げていて……。


「あ。新年あけましておめでとう。霞、今年もよろしく」


テレビで芸能人たちが口々に新年の挨拶を交わすのにつられて、ポンと手を打った。


「いや、今年だけじゃない。末永く」


わざわざといった感じで付け加えられ、私はグッと詰まった。
膝の上で両手をギュッと握りしめ、


「〜〜霧生君っ。もう一度、落ち着いて話を……」


軽くお尻を浮かして座り直し、思い切って切り出した。
途端に、「却下」とすげなく返される。
それどころか。


「君も『霧生』なんだから、僕の呼び方考えたら?」
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