キミの魔法にかけられた~隣のデスクの無愛想な後輩が急接近してきて!?~
優しい真実


定時に仕事は終えたというのに、会社を出る頃は日が落ちはじめていた。


「で、でさ。さっきのどういう事?」

夕日色に染まる影が2つ並んでいる。隣を歩く甲斐くんがしっかりと私の手を握ってくるから、緊張して声が上擦ってしまう。


「はい?」

「えと、だから。さっき、本当の実力だからとか言ってたの……」

「あー、キスする前の話ですね」

「キッ、キスとかわざわざ言わなくていいから!!」

「声が大きいですよ」

「だ、だって甲斐くんが!」

「先輩、顔が赤いですよ」

「う、うるさい!!」

甲斐くんの話し方は相変わらず単調なものだから、私の叫び声だけが道端に響き渡った。

< 23 / 29 >

この作品をシェア

pagetop