赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


五月初めの月曜日の午前中、脚立に登り庭の手入れをする相葉くんを眺める。

今日はシマトネリコという常緑樹の剪定をしていて、見上げる相葉くんの向こうには少しぼんやりとした春の青空が広がっていた。

「匡さんの色気がどんどん増していく気がする。このままだと歩いているだけで言い寄られてそこらじゅうで美女に誘惑される日も近いかもしれない」

私の言葉に、相葉くんはチラッとだけこちらを見て、でもすぐに視線をシマトネリコに戻した。

「それ、ボケてるんですよね? なんか桧山さんだと実際美女に言い寄られてそうだし〝そんなわけあるか〟ともツッコめないんですけど」
「ボケてないよ。本気だよ。なんか、一緒に暮らし始めてからどんどん色っぽくなってるし、それがもう天井知らずっていうか、日々マックスを更新してるんだよ」

おかげで、私は見慣れるどこか毎日ドキドキしている状態だ。
二十年以上の付き合いになるのに未だに顔立ちの良さやまとう雰囲気にときめくなんて相当だ。

二週間前の月曜日、初めて一緒に紅茶を飲んで以来、三日と空けず顔を出す麻里奈ちゃんならわかってくれるかと思ったけれど、返ってきたのはキョトンとした顔だった。

『匡くんのことは世界で一番カッコいいとは思ってるけど、ときめきとかはないかも。ただ誰にもとられたくないと思うだけだし。っていうか麻里奈、今まで誰にもドキドキしたことない』

麻里奈ちゃんがそんなことを言い出したせいで、そこからの議題は〝恋愛感情とは〟に移り、匡さんの色気についてではなくなってしまったけれど。


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