赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「いいですか? 何度も言いますけど、俺のクビもかかってるってこと、忘れないでくださいね」

珍しく真剣な顔で言う相葉くんにしっかりと頷いてから家を出る。
天気は快晴。緩く吹く風がここちよく髪を揺らす、絶好のポスティング日和だ。

肩からかけたトートバッグの中には、相葉くんの勤務する花屋を宣伝するための広告が二百枚。
これをはけるのが今日の私の秘密の使命だった。


話の発端は、麻里奈ちゃんの誕生日を知ったことだった。

『二十歳になるし、ママが盛大にパーティーしようって昨日言い出したの。まだ日程にもだいぶ余裕があるし今から準備して知り合いたくさん呼ぶつもり。もちろん、匡くんにも招待状送るし……だから、美織さんも来たいならくれば? もし、ドレスがないって言うなら、用意くらいしてあげてもいいし』

素直ではないけれどとてつもなく可愛い誘いを受け、ふたつ返事は返したものの、誕生日プレゼントを用意するお金がないことに後から気付いた。

今までバイト経験すらないので当然貯金もない。
好きに使っていいと匡さん名義のカードは持たされているにしても、そこから支払って誕生日プレゼントを買うのはなんだか違う気がする。

だからといって、働きたいと言ったところで匡さんの答えはノーに決まっている。


< 162 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop