赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「だとしても、俺の妻の席はもう埋まっている。どうでもいい話だ」
「そんな言い方……あの、きちんと対応しないんですか? 私には麻里奈ちゃんは真剣な想いを抱えているように見えました。それを蔑ろにするのは……」
「やけにつっかかるな。なにか怒らせるような発言があったのなら謝る」

すんなりと言われ、やりきれない思いが心を覆った。

私のボルテージに対して、匡さんがあまりにスッと引く姿勢を見せたからというのもあると思う。

でも、やるせない気持ちになった理由の大部分は、麻里奈ちゃんの想いに対して向き合おうとしない匡さんの態度にだった。

麻里奈ちゃんは、昔の私と同じだ。
匡さんにまったく相手にされず、本気の告白をしているのに、まるで子ども相手にするみたいに拒否することもなくいなされている。それが悲しかった。

「……もういいです。余計な口出ししてすみませんでした」

匡さんと結婚している立場の私が、麻里奈ちゃんに過去の自分を重ね共鳴するのはおかしい。

麻里奈ちゃんからしたら、それこそ喧嘩を売っているととるだろう。
きっと馬鹿にするなと怒鳴られる。

それでも、どうしてもすんなりとは流せず、気持ちはいつまでも重たいままだった。


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