ママの手料理 Ⅲ
第3章

不死鳥

リムジンから見える空は、今の私達の不安なんてものともしない程の澄んだ青色。



「あー鼻血出そう…アメリカ人の肉体美を間近で見れるなんて耐えられない俺」


その綺麗な空を窓ガラス越しに眺めながら、大也が興奮気味に呟いた。


ここでポエムのような良い言葉を言えばいいものの、その内容はそんなものとはかけ離れている。


「ドローンの操縦、頑張らないと……」


まるでこの世のものとは思えない程に素晴らしい青空を憎々しげに見上げた私は、気合いを入れるように吐き出した。



何を隠そう、今日はジェームズさんのお嫁さんのティアラを取り返す決行日である。


一昨日に銀ちゃんのパソコンがハッキングされるというハプニングに見舞われたものの、今のところ彼のパソコンは何とか生き延びている。


伊織は飛行機の遅延でアメリカに着くのが今日になるらしく、出来るだけ早く来てくれる事を願うばかりだ。



空港からホテルに来る際に乗った例のリムジンを運転しているのは湊さんで、私達は後部座席で現地に到着するのを今か今かと待っていた。


(やばいめっちゃ緊張する…大丈夫かな、上手く出来るかな…)


私と笑美ちゃんは実際に盗みの場を訪れるのは初めてだから、少し前から手を握りあって精神統一を行っている。
< 133 / 355 >

この作品をシェア

pagetop