ママの手料理 Ⅲ

死亡フラグ

貿易会社、18階。


つい先程、銀河が再び感電装置を作動させた為、多少は怪盗mirageにツキがまわってきている。


そんな怪盗フェニックスとの闘いは、早くも2時間が経過しようとしていた。



「………」


汗で肌にべっとりと張り付いたワイシャツの袖を雑に捲った高杉 琥珀は、息をつく暇もなく新たな敵と対峙していた。


今の琥珀は、何がなんでも45階に辿り着いて盗みを成功させるという気に満ち溢れていて。


それもそのはず、先程メンバー内で一悶着あり、それを止める為に紫苑が建物内に侵入したからである。


危険だから彼女の傍に行きたいものの、此処から下に降りるのは時間のロス。


変な所で自我が強く、1度言い出したら後戻りをしない彼女の為に琥珀が唯一出来ることは、ティアラを無事に奪還する事だった。


仁の事はまだ良く思っていないけれど、せめて盗みが終わるまでは家族として一致団結しなければ。


ふーっ、と息を吐いた現役警察官は、左手で漆黒の髪をかきあげ。


「…駄目だ、殺す」


警視総監でさえ震え上がりそうな程の強い声で、そう言い放った。



ずっと既のところで力を緩めて敵を殺さずに倒してきた琥珀は、遂に我慢の限界に達していたのである。


アメリカの男共はどれ程強いのかと期待していたけれど、彼らはただの筋肉バカでしかなかったようだ。
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