ママの手料理 Ⅲ

冠と檻

『ねえ聞いて琥珀、俺今色んな意味で興奮してる』


『やめろ気持ち悪い』


『琥珀に近付く敵は俺が全部倒すから』


『お前はお前に近づく敵だけ倒せばいいんだよ…』


『あ、そこのお前!俺の琥珀に手を出したらぶっ殺すからな!…え、日本語分かんないの!?もう、どっちみち殺す!』



大也と琥珀の仲良さげな声をイヤホン越しに聞いた私ー丸谷 紫苑ーは、ふふっと笑みを漏らした。


(2人共、一緒に行動してるのかな?)


それから続けざまに、


『エレベーターは楽ですね。もう、先程の様な過ちは繰り返しません』


何処かリラックスしたような航海の声と、


『待たせたなお前ら、遂に俺様の出番だぜ!最後に全員蹴散らしてやるわ!』


誰も彼の登場など待ってはいないのに、厨二病チックな言葉を言う銀ちゃんの声が聞こえてきて。


久しく無線機越しに彼らの声を聞いていなかったから、何だか嬉しくなってしまう。



(あと少しで盗みが終わる…)


無茶をしたのが事の始まりで本来ならすぐに戻れば良かったものの、変なところでプライドの高さを見せつけた私は、現在44階に到達していた。


ガンマの弟とばったり遭遇してからほぼノーストップで階段を上り続けてきたから、足腰が限界を迎えている。


しかし、この地獄の階段とももうすぐおさらばだ。
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