ママの手料理 Ⅲ
エピローグ





「ブーケトス、キャッチしたかったな…」


「あの花束の事ですか?綺麗でしたね」


湊さんと笑美ちゃんが使っているホテルの部屋で、ソファーに深く座った私がそう漏らせば、すかさずソファーの肘掛けに腰掛けた航海が返答してくる。


「うん。ジェームズさんもお嫁さんも、本当に綺麗だったなぁ」


「盗り返したティアラが良い味出してましたね」


私は、つい数時間前に行われた結婚式を思い出しながら感慨深げに呟いた。


くるりとこちらを向いた航海の、色覚調整眼鏡の奥の目が優しく細められたのが分かった。





怪盗フェニックスからティアラを盗り戻し、爆弾の解除をして奇跡の生還を果たしたあの日から、実に2週間近くの時が経った。


あの後、湊パパの遺体と共にエレベーターに乗り込んだ私達は、地上で既に息絶えた湊ママを発見した。


何がどうなって湊ママが死ななければならなかったのかは分からずじまいだけれど、彼女の遺体の隣に湊パパの遺体を横たえた湊さんが、不謹慎だけれど何処か清々しい顔つきだったのは良く覚えている。


その後、あまりにも怪我人が多すぎたから私達はリムジンで近くの病院まで直行して。


手を怪我した航海と足に銃弾を受けた大也、左手の骨にヒビが入った琥珀の3人は即日入院、その他のメンバーは処置だけしてもらってホテルに戻る事となり。
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