没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
さらにジェラールは、ルネを含めた被害女性たちへの返金の肩代わりをしてやると提案した。

「お前は給金から無理のない程度に少しずつ俺に返済しろ。期限は設けないが、時間がかかっても必ず返せ。自分のしでかしたことへのせめてもの償いだからな」

(それなら被害女性たちは金銭的な面ですぐに救われるわ。ブライアンさん一家の生活も守られるし、色んな人のことを考えた優しいご命令ね)

オデットはホッとして続きの話を聞く。

「お前はこの騎士たちについてこれから王城へ行き、入団の手続きをしろ。言っておくが見習いといえども訓練は厳しいぞ。性根を叩き直すには最適の場所だな」

ジェラールは表情の険しさを解いて、ブライアンにフッと笑いかけた。

「王太子殿下……感謝いたします……」

顔を上げたブライアンの頬に涙が流れる。

ジェラールの慈悲が彼の心に深くしみわたり、今後はきっと堅実に生きてくれるのではないかと思わせられた。

満足げに頷いたジェラールの横顔に、オデットは頬を染めた。

(殿下は優しく頼もしい方ね)

王太子である彼に失礼な態度は取れないと我慢しているが、両腕を広げて抱きつきたい気分だ。

心の奥に灯った小さな恋の炎。

オデットがそれに気づく前に、後ろから腕を強く引っ張られた。

「キャッ、ルネ?」
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