没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
ヨデル伯爵の背後には一派がいると睨んでいるそうで、うまくいけば今回の件をきっかけに粛清できるという話だった。

(ええっ!? 私の鑑定のせいで、そんな怖い話になるなんて……)

ジェラールと近侍がヨデル伯爵の尋問について相談し始めたので、オデットは慌てて会話に割り込んだ。

「あの、人間ですから相性の悪い相手がいて当たり前だと思うんです。好きだと言ってくれる人ばかりじゃなくていいんじゃないでしょうか。それに敵意を向けてくる相手に優しくしてあげたら、きっと嫌うのをやめて仲良くなれると思うんですけど……」

ジェラールは意表を突かれたようにオデットを見て、近侍はたちまち目をつり上げた。

「無礼者が! お前の友人関係と一緒にするな」

「ご、ごめんなさい」

カディオに怒鳴られてオデットが肩を揺らしたら、ジェラールが椅子を立った。

彼は国王に次ぐ権力者。

不敬罪に問われたらどうしようと身を縮こまらせたが、意外にも「カディオは下がっていろ」とかばってくれた。

「怯えなくていい。そういう考え方もあると感心していたんだ」

隣に立った彼がじっと見つめてくるので、オデットは戸惑う。

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