没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
花形のクッキーは中心に飴をのせて焼いてあり、ルビーとサファイアのように美しい。

「とっても綺麗なクッキーね。ありがとう。今紅茶を淹れるから座って待っていて」

ルネを猫脚のテーブルに向かわせたオデットは、ブルノに休憩の声をかけてからキッチン兼自室へ入る。

数分して三人分の紅茶をトレーにのせて戻ると、テーブルを囲む人数が増えていた。

「オデット、ただいま!」

「あらロイ。もう学校が終わったの?」

「オデットに会いたくてホームルームは出なかった」

制服姿のロイは、近くに住むブルノの孫息子。

鼻のつけ根にそばかすを散らし、まだあどけなさを残す十三歳だが、背伸びして大人ぶろうとするところがある。

学校帰りに毎日のようにこの店に寄るのは明らかにオデット目当てであるのに、鈍感なオデットはロイの恋慕に少しも気づいていない。

「もう。さぼっちゃ駄目よ。急がなくてもロイの分のお菓子は残しておくから」

優しく注意して少しくせ毛のロイの頭を撫でたオデットは、急に目頭を熱くする。

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