契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 まずは言われた通りに今後、給料が入ったら口座に振り込むと言い、銀行口座を聞く。その現場を弁護士に抑えてもらい、父に逃げ道を作らせない計画だ。誠吾さんは近くの席に弁護士と待機してくれると言っていた。

 ただ、私と誠吾さんの休みが被るのは六日後で、父が戻る前日となってしまった。それまでに父がまた空港に来ないことを祈るばかりだ。

「ねぇ、今日はたしか金城さんと同じ便だったよね? 大丈夫?」

 噂が流れてから金城さんと一緒に仕事をするのは初めて。何度か社内で見かけたことがあるけど、目が合うと意味ありげに微笑んでいた。

 そんな金城さんだもの、同じ便に乗務したら今まで以上にきつく当たってくるかもしれない。

でも、どんなことにだって耐えてみせる。思い返せば私はもっとつらい経験をしてきた。嫌味を言われ、嫌がらせをされるくらいなんてことない。

「大丈夫。さすがに乗務中はなにもされないだろうし」

「それはそうかもしれないけど……」

 真琴は心配が拭えない様子。
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