契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
もう一度最初からはじめよう
 波の音で目が覚め、ゆっくりと瞼を開ける。窓へ目を向ければカーテンを閉めるのを忘れた窓の外にエメラルドグリーンの海が広がっていた。

 昨夜の便でタイに到着し、せっかくだから少し羽を伸ばして最終便でプーケット空港に向かった。今日は十八時までにタイの空港に戻ればいいことになっているから、観光をしていこう。

起き上がって窓を開け、ベランダに出る。

「気持ちいい朝」

 朝陽を身体いっぱいに浴びながら綺麗な海を眺めていると、この二ヶ月間に起きた怒涛の日々が嘘のよう。

 二ヶ月前の空港の一件後、父は観念したように抵抗することを止め、警備員に連れていかれた。

 誠吾さんは弁護士に連絡をしていて、すぐに駆けつけてくれた事情を聞いた弁護士は法的な手続きを請け負ってくれて、父とはもう顔を合わせないように配慮してくれた。

 騒ぎを聞きつけた上司にも気遣われ、この日はそのまま退社することとなり、誠吾さんに自宅まで送ってもらった。

 その時、誠吾さんは帰り際に優しく私の髪に触れ、『今日はゆっくり休め。これからのことは明日以降考えよう』と言ってくれた。

 父の今後も気になるし、あれだけ派手に父が空港内で騒いだんだ。明日にはまた新たな噂が広まっているだろう。
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