契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「ごめん、気づかなくて」

「いいえ、それよりも仕事ですか?」

 邪魔したのなら申し訳ない。だけど誠吾さんは首を横に振った。

「違うよ、見て」

 言われるがまま彼の隣に腰を下ろしてパソコンを覗き込むと、結婚式場のホームページだった。

「結婚式ですか?」

「あぁ。だって凪咲、今すぐがいいって言っていただろ?」

 そう言えば私、昨夜はそんなことを言った気がする。

「準備期間のことを考えると、最短でも半年だな。アクセスもよくて、式場の雰囲気もいいここが最有力候補なんだけど、凪咲はどう思う?」

 ひとりで話を進める誠吾さんに慌てて言った。

「ちょっと待ってください、半年後に結婚式だなんて無謀すぎませんか?」

 それに今はまだ彼と結ばれた幸せの余韻に浸っていたい気持ちもある。

「無謀じゃないさ。逆に半年もの時間があるんだぞ? 出会ってすぐに結婚を決めた俺たちにしてみれば、十分すぎる準備期間だ」

「それはそうかもしれませんが……」

 すると誠吾さんはパソコンをテーブルに置き、私の手を握った。

「俺は離婚してからずっと凪咲とまた家族になれる日を夢見てきた。想いが通じ合ったんだ、本当なら明日にでも結婚式を挙げたいくらいなんだ」

「誠吾さん……」

「それに早く凪咲は俺のものだってみんなに自慢したい」

 自慢したい、だなんて。それは私のほうだ。

「わかりました。出来るだけ早く結婚式を挙げましょう。決断が早いのはなんだか私たちらしいですし」
< 230 / 236 >

この作品をシェア

pagetop